クリスマス島からの手紙

お元気ですか。夜遅くまでパソコンにむかって、キーを打っているのでしょうか。
 僕はこの間、久しぶりにルーマ・ティンギの前の、崖の上を歩きました。崖の下は
海です。そこはぎざぎざにとがった岩がずうっと続いている所で、土なんかほとんど
ありません。それでも、少しでも土のあるところには、背の高い木や草が生えて
いるのです。僕が、木がたくさん生えているところの、ちょうど人ひとりが通れる位の
トンネルみたいに、木の枝がそこだけない所を、歩いていると、右側の木々の枝のかげの
、落ち葉のたくさんある上に、白いきれいな鳥が座りこんでいるのを見つけました。
その白い鳥は、そこを巣にして、卵をあっためているのでした。その鳥ときたら、
そのくちばしはまるで、サラダにするように切り分けられたトマトのように、つややか
で新鮮で、透き通った赤い色をしているのです。そして尾っぽのところには ちょうど
指揮者のタクトみたいに、すきっと伸びた真っ赤な尾をつけていました。
 ところが、僕にはまったく、その鳥をとってやろうだとか、抱いている卵を食べてやろう
などとは思いもしないのに、その鳥はちっともわからないで ちょっと羽を開いて、
卵の上に低く伏せって、ぶるぶる震えているのです。真っ黒な大きな目をぱちくりして
います。僕はそのきれいな鳥が可哀想になって、そっと、驚かさないように立ち去り
ました。
 それから 僕は 雨が降ると、あの白くてきれいな鳥は、雨に濡れて黒い目を
ぱちくりさせて、あたまをやけにふっているんじゃないかと思いました。

その何日かあと、そっとのぞいて見ましたら、ひながかえっていました。母親のはねの下
に入って、よく見えなかったのですが、白い羽毛に包まれていて、くちを開くととても
赤いのが目につきました。

RUMAH TINGGI(ルーマ・ティンギ)はインドネシア語で、「高い家」という意味だ
そうです。僕の働いているレストランです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です