2008年5月12日 Comment 0 星野道夫 星野道夫(写真家) 19歳の時に見たアラスカのシシュマレフ村の写真に魅せられて、ひと夏を 村のエスキモー家族と過ごした彼は、その後アラスカの写真を撮り続けた。 44歳の時ヒグマの事故で死去。 最近見たドキュメンタリーで印象に残る彼のエピソードがある。 ある時彼はカリブーの群れを撮影しようとツンドラの草原にテントを構え毎日のように待っていたが、 来る日も来る日もカリブーはおとずれなかった。何日も経ちあきらめかけたころ 突然遠くから黒い影が群れをなして近づいてきた。 それは彼が待ち望んでいた、カリブーの巨大な群れだった。 しかしその時彼のそばには撮影機材がなかった。 何千キロも食料を求めて移動するカリブーの群れ、その営みは何万年も毎年つづけられている。 そしてその群れを見る事は一生にこの瞬間だけだ。彼の頭には既にカメラを取りに行こうという アイディアはなくなっていた。 カリブーの大移動をその目に焼き付けようと彼はその場に座り込んだ。 彼を取り囲むようにしてカリブーの群れが通り過ぎて行った。 彼にとって写真を撮る事は二の次だったのだ。 (もちろん、星野道夫が残した写真集はすばらしいものだ。動物や自然は大きく、静けさの中にパワーを持っている。) アラスカに根ざして、大自然やそこに生きる動物や人を見て、その中に身を置いた彼は、きっと何にも代え難い光り輝く何かを見つけた一人なんだと思う。