2006年12月30日 Comment 1 ビル・ヴィオラのミレニアムの5天使に死と再生を見る ビル・ヴィオラの作品は生と死を生身の人間を通して見せる作品が多い。 生きている中で見せる苦悩や、日常にみられる表情をスローモーションで 細分化することで、複雑にからみあった感情や理性=人とは?を考えさせる。 しかし「ミレニアムの5天使」はそれらの作品とは全く違った印象だった。 手法はやはりスローモーションであったり、他の作品にも用いられている 水をつかったイメージ。しかしそこに登場する人間は今までの生ある”人間”とは違う。 彼はそれを”天使”と名付けている。 「ミレニアムの5天使」は、5つのスクリーンで形成され、各スクリーン 8分〜12分の映像の中で、天使は1度だけあらわれる。穏やかな映像 をきれいだなーと眺めていると、突然思わぬ方向から天使が静寂をやぶり突入してくる。 入水するものや、逆に水から上昇する”天使”。 無重力・リキッド・曲線的といったイメージが急に破壊されて強烈な重力と引力・鉛・冷のイメージへと転換する。天地は逆転し、海は宇宙となり宇宙は海となる。 そこで「”天使”とは?」と考える。調度クリスマスで教会へ行ったばかりで天使のイメージというとマリアに受胎告知をするガブリエルや、イエスの誕生を告げる天使たち。 もちろん羽の生えた子供という典型的なかわいらしい天使のイメージとは違うが、暖かく、やわらかな印象だ。それは全くここでの天使像とは違っている。 漫画で地球を破壊しにきた天使と主人公が戦うストーリがあるそうだが、ちょうどそんなイメージに近いのかもしれないなと思う。 「ミレニアムの5天使」の天使はどれも恐ろしい存在に私には映ったので。 死とは恐ろしいものだが、この地球の重力から離れて、もっと深く神秘的なものに溶けて行き、全てが個体ではなく水となり泡となり宇宙となる。そんな一言でまとめられるものではいけれども、 強烈なインパクトで死と再生イメージを作品から感じましたね。